慰謝料と養育費の相殺は可能? 不払いの対処法・予防法も教えます!

離婚すると、子どもの養育費や慰謝料の支払い義務が発生するケースがあります。中には、養育費をもらいながら、慰謝料を支払う立場の人もいることでしょう。もしも、養育費と慰謝料を相殺できたら楽ですよね。しかし、実際に慰謝料と養育費を相殺することができるのか、できない場合はどうすればいいのかなど、よく分からないこともあるでしょう。

そこで今回は、慰謝料と養育費の相殺について詳しく解説します。

  1. 慰謝料と養育費は相殺できる?
  2. 慰謝料が支払われない場合の対処法
  3. 養育費が支払われない場合の対処法
  4. 慰謝料や養育費の不払いを防ぐには?
  5. 慰謝料と養育費の相殺に関するよくある質問

この記事を読むことで、慰謝料や養育費の不払いを防ぐ方法がよく分かります。まずは、記事を読んでみてください。

1.慰謝料と養育費は相殺できる?

最初に、慰謝料と養育費の相殺に関する基本を見ていきましょう。

1-1.相殺の要望が出るケースは?

慰謝料と養育費の相殺希望は、以下のようなケースで発生します。

  • 妻の不倫が原因で離婚したが、子どもの親権は妻にあり現在も子どもを養育中

慰謝料の支払いと養育費の受領でお金の出入りがあるのなら、まとめてしまおうと考えるのも自然なことでしょう。それぞれの手続きに伴う手間もかからず、一見して合理的なやり方に見えます。しかし、実際には法的な制約がかかるため、スムーズに相殺できるとは限りません。

1-2.法律では相殺が認められていない

慰謝料と養育費の相殺は、法律では認められていません。養育費は、民法510条によって差し押さえが禁止されている債権であることから、相殺できないのです。また、民法505条により、相殺するためには、慰謝料と養育費の両方で支払い時期が到来している必要があります。慰謝料は一括での支払いが一般的ですが、養育費は子どもが成長するまで毎月支払われることになるため、505条の条件に当てはまらないのです。

慰謝料と養育費は相殺できない、と法律で定められているんですね。
はい。ですから、基本的に相殺はできないと考えましょう。

2.慰謝料が支払われない場合の対処法

慰謝料が支払わない場合の対処法をご詳しく解説します。

2-1.直接請求する

慰謝料の不払いがあるときは、相手に電話をかけるなどして、直接請求してみましょう。中には、うっかり振り込みや送金を忘れていたというケースもあります。催促して数日以内に支払いがあれば、良しとしてください。ただし、口では支払うと言いながらも、ずるずると遅延するようなら、注意が必要です。

2-2.内容証明を送付する

直接請求しても慰謝料を支払ってもらえない場合は、内容証明を送付してみましょう。なるべく弁護士に相談し、弁護士の名前で送付してもらうと効果的です。内容証明の送付自体には、法的な効力はありません。しかし、弁護士の名前で文書が届けば、相手に大きなプレッシャーを与えることができます。

2-3.分割での支払いを検討する

内容証明を送付してもなかなか支払ってもらえない、もしくは、今すぐ支払うことはできないなどと居直られたりすることもあるでしょう。慰謝料の支払いをなるべく早く確実に行ってほしいのなら、分割での支払いを検討するのもひとつの方法です。分割での支払いが可能なら、相手側の心理的なハードルも下がり、支払ってもらいやすくなります。

対処法は複数あるんですね。
はい。相手の事情も考えて方法を選びましょう。

3.養育費が支払われない場合の対処法

養育費が支払われない場合の対処法を詳しく見ていきましょう。

3-1.直接請求する

直接電話をかけるなどにより、養育費の支払いを促しましょう。中には、催促されるまでは払わなくていいと勝手に考えている人もいます。養育費は、子どもを育てるために必要な経費です。毎月の支払いが期日どおりに行われることで生活が安定します。離婚をしても親として、子どもを養育する義務があることには変わらないのですから、しっかり催促しましょう。

3-2.内容証明を送付する

内容証明を送付して、養育費の支払いを促しましょう。多くの場合、別れた夫が妻に対して養育費を支払うことになるはずです。しかし、中には、別れた妻にお金を支払う必要はない、子どもを育てるほうが稼げばいいと勝手に判断するケースもあるので注意してください。なお、弁護士の名前で内容証明を出せば、強力なバックアップになるのでおすすめです。

3-3.家庭裁判所から履行勧告・履行命令を出す

家庭裁判所を通じて離婚した人は、家庭裁判所から履行勧告や履行命令を出してもらうこともできます。家庭裁判所から通達が届けば、多くの人が支払うことでしょう。なお、履行勧告や履行命令は、家庭裁判所を通じて調停離婚・裁判離婚した人だけのもので、当事者だけで協議離婚した場合は利用できません。

3-4.強制執行により回収する

家庭裁判所の履行命令をしても支払いが見られない場合は、強制執行により回収することも可能です。多くの場合、相手の給与を差し押さえることになるでしょう。具体的には、相手の勤務先に裁判所から給料の差し押さえ命令書を送付され、強制的に回収されるのです。また、場合によっては相手の預金口座の差し押さえもできます。強制執行による回収は、相手の社会的立場や生活面に大きな影響を与えるため、最終手段として考えてください。

養育費の場合は強制執行ができるんですね。
はい。最終手段として考えましょう。

4.慰謝料や養育費の不払いを防ぐには?

慰謝料や養育費の不払いを防ぐ方法を詳しく見ていきましょう。

4-1.離婚協議書を作成する

離婚協議書を作成しておくと、慰謝料や養育費の不払い予防に効果的です。離婚協議書には、以下のような内容を記載してください。

  • 離婚を合意した旨の記載
  • 慰謝料の金額・支払期日・支払い方法
  • 親権者の指定 
  • 養育費の金額・支払期日・支払い方法
  • 子どもとの面会交流について
  • 財産分与について
  • 年金分割について

さらに、離婚協議書を公正証書として作成しておくこともおすすめです。公正証書は、公証人が公証人法や民法などの法律に従って作成する公文書であり、裁判所の判決などを待たずに強制執行手続きに移ることができます。慰謝料や養育費を確実に支払ってもらうために強力な手段となるでしょう。

4-2.親子の交流機会を確保する

養育費を確実に支払ってもらうには、親子の交流機会を確保することも大切です。そもそも、親による虐待が離婚の原因でない限りは、親子が交流する機会を奪ってはいけません。また、交流機会を確保すれば子どもに対して情がわくので、養育費の支払いにつながります。子どものためにも、子どもが立派に成長するまで親子の交流機会を持ち続けましょう。

4-3.相手の支払い能力に応じた金額を要求する

相手に慰謝料や養育費を払う意思があっても、支払い能力に応じた金額である必要があります。実際に、無理な金額を要求しても、支払ってもらえないのでは意味がありません。慰謝料や養育費は、相手の財産や年収などに見合った金額にし、確実に支払ってもらえるようにしてください。

あまり高額な費用を請求しないのもポイントなんですね。
はい。相手にも生活があることも考えましょう。

5.慰謝料と養育費の相殺に関するよくある質問

最後に、慰謝料と養育費の相殺に関する質問に回答します。それぞれ役立ててください。

Q.慰謝料や養育費をお互いに支払わなければいいのでは?
A.確かに、金額面ではお互いが納得することでうまくいきそうに見えるでしょう。しかし、養育費は子どもが成人するまでに必要なお金ですし、離婚しても支払い義務が残ります。子どもが大きくなってから改めて請求されることもあるので、覚えておきましょう。

Q.養育費を一括払いでもらえば安心できる?
A.夫婦の合意があれば可能です。全額を一括払いしてもらうことで、不払いの心配がなくなるのがメリットでしょう。ただし、計画性がない人が大金を手にすると無駄遣いしてしまい、途中で資金不足になることがあるので注意してください。

Q.慰謝料請求に時効はある
A.慰謝料請求は、離婚後3年で時効を迎えます。3年を経過すると、請求権が消滅するので注意してください。なお、時効を迎えても相手に支払う意思があるときは、慰謝料を受け取ることができます。

Q.未払い分の養育費に時効はある?
A.以下を参考にしてください。

  • 当事者間の協議離婚合意書に定める場合や離婚公正証書にする場合:5年
  • 離婚調停・養育費調停・審判・離婚訴訟によって定める場合:10年

Q.失業して養育費の支払えないと言われたが確かめる方法はある?
A.探偵事務所などに依頼して、相手のことを調査してもらうといいでしょう。本当に失業していることもあれば、ギャンブルで大金を使ってしまったり新しいパートナーに使い込んでいたりすることもあります。なお、当アヴァンスでも、離婚したパートナーの身上調査をお受けしていますので、お気軽にご相談ください。

まとめ

今回は、慰謝料と養育費の相殺について詳しく解説しました。慰謝料と養育費を相殺することは、法的に認められていません。まずは、お互いがそれぞれに義務を負っている支払いをきちんとすることが必要になります。慰謝料や養育費を支払ってもらえない場合は、直接請求するほかに、内容証明を送付したり家庭裁判所から履行勧告を出したりなども可能です。また、強制執行で回収することもできるのであきらめないでください。特に、養育費は子どもの将来のためにも、約束どおり支払ってもらうことが大切です。法律に詳しい弁護士に相談して、確実に支払ってもらえるように手続きを進めましょう。