
離婚の準備は何から始める? 後悔しない離婚の準備と自立への道
離婚をするには結婚するときの何倍ものエネルギーが必要です。まして、裁判ともなれば時間もかかり、心身ともに疲れてしまいます。離婚訴訟は、法律で定められた決まりの中で戦わなければなりません。何も知識がないままに衝動的に家を飛び出し、自分の意志だけで離婚できると思っていると、損をするどころか、離婚できない可能性もあるでしょう。なるべくスムーズに事を運ぶには、事前の十分な準備が必要です。この記事では、「離婚したい」「でも何から始めていいかわからない」と悩む人のために、離婚で損をしないための準備について詳しく説明します。
この記事を読むことで、離婚を決意した瞬間からできる準備の方法や心構えがわかります。何から始めたらいいかわからないときに、ぜひ参考にしてください。
1.後悔しない離婚には準備が必要
離婚に際しては、相手との話し合いやさまざまな対応・決断を一人で行わなければなりません。
1-1.合意なき離婚の大変さ
離婚の理由はそれぞれの夫婦によって千差万別です。当然、離婚を決意するまでにはさまざまな葛藤があったことでしょう。しかし、本当に大変なのはこれからです。経験者によると、離婚を決意するまでより離婚調停や裁判の最中のほうが、よほどストレスが高かったという声も聞かれます。
もし離婚がお互いの合意であれば、夫婦で話し合い、離婚届を提出することで離婚が成立します(協議離婚)。しかし、夫婦のどちらかが離婚をしたくても相手がそれに応じない場合には、調停離婚、または裁判離婚となるのです。調停離婚は、家庭裁判所の調停によって離婚の条件を決めます。裁判離婚は離婚訴訟を起こし、裁判所に判決を下してもらうものです。裁判ともなると、判決が下りるまで長期間かかることがあり、その間気持ちを強く持つことは並大抵ではありません。
1-2.離婚をするためには法定離婚原因が必要
調停や裁判で離婚するには、民法の定めによる「離婚原因」が必要です。法定離婚原因には次のようなものがあります。
- 不貞行為(浮気・不倫)
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 強度の精神病(回復の見込みがないもの)
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由
1-3.準備なしの離婚は不利になることも
「すぐにでも離婚したい」「家を出たい」と思っても、衝動的に別居したり、離婚を迫ったりすべきではありません。相手に離婚の意志を告げる前に離婚準備を進めることが大切です。たとえば、配偶者の不倫を疑った場合、何の準備もないままに離婚を告げてしまうと、相手は不倫の証拠を隠滅したり、財産分与の対象となる共有の財産を隠したりするかもしれません。また、子どもを置いて家を出ると、親権を得るのに不利になります。このように、自分が不利にならないように、離婚の準備をする必要があるのです。
ただし、深刻なDVの被害にあっている場合は、身の安全を確保するために、すぐにでも家を出ることをおすすめします。警察や女性保護のセンターに相談しDVシェルターに身を隠しましょう。
1-4.離婚の準備は何から始めたらいいか?
離婚の準備で、真っ先に考えなければならないのがお金の準備です。離婚して家を出るのであれば、引っ越し費用や当座の生活費を準備する必要があります。このとき、離婚の慰謝料をあてにしてはいけません。財産分与や慰謝料は離婚成立後に支払われるものです。その前に、経済的に自立することは離婚後の生活を安定させるためにも大切になります。まして、子どもを引き取る予定ならなおさらです。離婚のお金の準備については2章で詳しく説明します。
1-5.いつから準備を始めたらいいか?
専業主婦の場合、お金を準備するのにある程度の期間が必要でしょう。たとえば、引っ越しと当座の生活費で100万円必要とした場合を考えてみましょう。個人の財産が全くなく、一から貯金するとなると、1年計画としても毎月約8万円の貯金が必要です。「毎月そんなに貯金できない」「1年も待てない」という場合は、パートを始めるなど、自分でお金を稼ぐ方法を考えたほうがいいでしょう。
個人資産があり、引っ越し費用の心配がない場合でも、仕事を探さなければなりません。離婚に有利な証拠を集める必要もあるため、少なくとも数か月かけて準備を進めたほうがいいでしょう。
2.離婚の準備~経済的な自立のために~
離婚を考えたときに最も大切なことは、離婚後に自立した生活ができるか否かです。経済的な理由で離婚をあきらめることがないように、しっかりと準備しましょう。
2-1.離婚後の自立に必要な要素
自立した生活を送るためには、「生活費」「住まい」「仕事」が必要です。通常、離婚の調停や訴訟になると、別居しながら離婚手続きを進めることになります。この時点ではまだ離婚は成立していません。しかし、訴訟中にも安定的に生活している様子を示すことで、親権についての話し合いを有利に進めることができます。別居を始める前までに、生活の基盤を整えておきましょう。
2-2.生活費を試算してみる
別居に踏み切る前に、生活費が月々どのくらいかかるのか試算してみましょう。子どもがいる場合は教育資金も視野に入れます。まずは慰謝料や養育費をあてにしないで計算してみてください。
2-3.経済に見合った住まい
離婚に先立って別居をする場合、住まいを確保しなければなりません。離婚成立までの間は、実家に戻るのも一つの方法です。アパートを借りる場合は、月々の家賃だけでなく、引っ越し費用や家電品をそろえるお金が必要になります。決して無理をせず、自分の経済に見合った住まいを探しましょう。また、契約には保証人や安定した収入が必要です。契約前までに仕事を見つけておきましょう。
2-4.安定した仕事を確保
離婚後は自分の収入だけで生活する必要があるため、安定した仕事を確保することは必須です。すでに仕事を持っている場合は、離婚後も勤め続けられそうか、労働条件や雇用契約を見直してみましょう。現在の収入で足りない場合は転職を考えたり、資格取得で収入のアップを図ったりするなど準備が必要です。
2-5.現金や預金通帳を用意する
いざというときに頼りになるのはお金です。へそくりをためるなどして、すぐに現金化できる普通預金を準備しておきましょう。自分名義と子ども名義の預金通帳や印鑑も用意しておきます。
3.離婚の準備~子どもがいる場合~
離婚は親の都合なので、なるべく子どもに影響がないようにすることが大切です。離婚することで子どもに不利益が及ばないように配慮しましょう。
3-1.親権に関する準備
離婚する夫婦に子どもがいる場合、夫婦のどちらかを親権者に定める必要があります。離婚届に親権者を記載しなければ離婚届は受理されないのです。離婚調停時に夫婦が別居している場合、家庭裁判所は、子どもと同居している親に親権を認める傾向があります。ただし、同居の親の監護養育に問題がない場合に限ってのことです。したがって、親権を取りたい場合は子どもを連れて家を出るべきでしょう。生活が安定していることが親権を得るカギとなるため、住まいや仕事などをきちんと準備する必要があります。
3-2.養育費の取り決め
養育費は、子どもが成人するまでの間、別居する親から支払われるものです。養育費の金額は、家庭裁判所の基準(算定表)に基づいて計算されます。養育費を取り決めても不払いになることもあるので、支払い方法などを弁護士などに相談しておきましょう。
3-3.男親の離婚準備
日本では、母親が親権者になることが多かったのが、近年では父親が親権を希望するケースも増えてきました。しかし、子どもの年齢が低い場合や、母親が子どもを連れて別居している場合には、母親に親権が認められるケースが多いのが現状です。父親が親権を望む場合は、別居の際に母親による子どもの連れ去りを防止しましょう。
親権を望まない場合には、子供との面会交流の条件を決めておくことが大切です面会交流の実施と養育費の支払いは、交換条件ではありません。養育費の支払いの有無にかかわらず、希望を持って交渉をしましょう。
財産分与に関しては、妻の「財産隠し」に気をつけることが大切です。日頃から、妻に財産管理を丸投げせずに、財産の総額を把握できるようにしておきましょう。
3-4.離婚に関する公的補助
離婚してひとり親になった場合、「児童扶養手当」「児童育成手当」など、公的な補助が受けられることがあります。母子家庭等の住宅手当や医療費助成制度もあるので、離婚の成立と同時に手続きできるよう詳細を調べておきましょう。
4.離婚により受け取れるお金のための準備
不貞行為やDVなど、全面的に配偶者側が悪い場合には、慰謝料の請求ができることが知られています。それ以外にも、離婚によって受け取れるお金があるので、ここで詳しく説明しましょう。
4-1.婚姻費用請求の準備
夫婦は互いに生活費(婚姻費用)を負担する義務があります。そのため、別居中であっても、法律的には婚姻関係にあることから、扶養義務(収入が多いほうが少ないほうを扶養する義務)が発生するのです。通常は夫が妻に対して支払う義務が生じます。必ず受け取れるものなので、別居後は速やかに請求しましょう。金額は家庭裁判所の定める基準(算定表)に基づいて計算されます。
4-2.財産分与の準備
婚姻期間中に夫婦共同で築いた財産は、2分の1の割合で分け合います。名義は問いません。たとえば、不動産の名義が夫でも、専業主婦の妻にも2分の1の権利があります。不動産以外にも、預貯金・有価証券・自動車・保険などの財産をすべて合わせて分割するのです。別居時には、不動産の登記簿のコピーや預貯金の口座番号、保険証券や年金手帳も準備しておきましょう。
4-3.慰謝料請求の準備
離婚原因が、DVや不貞など一方的に配偶者側にある場合は、慰謝料を請求できます。離婚の理由によって慰謝料の相場金額が変わるため、弁護士に相談しましょう。浮気や不倫などが原因の場合は、不貞行為を証明する証拠が必要になります。
4-4.養育費請求の準備
親が離婚しても、子どもとの親子関係がなくなることはありません。親は子どもを養育する義務があるため、子どもと別居している親は、子どもが20歳になるまで養育費を支払う必要があります。
養育費請求の準備は、相手の収入を把握しておくことです。そのために、給料の明細表や源泉徴収票をコピーしておきましょう。
4-5.年金分割の準備
年金分割とは、婚姻期間中に夫婦それぞれが払った厚生年金保険料を分割する制度です。これにより、専業主婦が離婚しても、夫が払った保険料の最大半分までが、将来の年金支給額に加算されます。
手続きをするには、まずは年金情報通知書を入手してください。話し合いにより分割の割合を決めてから、年金分割の申請をします。
5.慰謝料請求などのための証拠を準備
慰謝料の請求には正当な理由が必要です。正当な理由を証明するために、「証拠」が必要になります。ここでは、慰謝料請求のための証拠の準備について解説しましょう。
5-1.証拠の重要性
慰謝料請求で一番多いのが、不貞行為に関するものです。相手の浮気を疑っても、「メールのやり取り」や「食事をしているところを見た」などは、裁判では証拠として採用されません。なぜなら、「不貞行為」とは「性行為」のことを指すため、性行為の存在を確認できる証拠が必要となるのです。不十分な証拠では相手に嘘をつきとおされ、結果として慰謝料の請求は認められることはありません。したがって、いかに裁判所で認められる証拠を用意するかが大切になります。
5-2.必要な証拠とは?
不貞行為やDVの証拠として採用されるのは、以下のようなものです。
【不貞行為の証拠】
- ラブホテルに出入りしている写真やビデオ
- 浮気相手と同居している記録
- 浮気相手の自宅に複数回出入りしている記録
- 本人が浮気を認めたことを話している録音テープ(夫婦の話し合いの席で合意のもと録音されたもの)など
【DVやモラハラの証拠】
- 身体的暴力による外傷の診断書
- 外傷を撮影した写真
- 暴力を受けた日時や場所を記した記録
- 精神的ストレスで通院した受診記録や診断書 など
5-3.証拠の集め方
不貞行為の現場をおさえるのは、一般的には難しいものです。確かな証拠を入手するためには、探偵社に依頼するといいでしょう。たとえば、探偵社アヴァンスに依頼すると、慰謝料請求の証拠となる調査報告書を提出することができます。
6.離婚準備に関するよくある質問
離婚の準備を進めるうえでの疑問や質問をまとめ、回答しました。参考にしてください。
Q.夫のメールに浮気相手と旅行に行ったやり取りが残っていました。浮気の証拠になりますか?
A.旅行に行っただけでは不貞行為があったかどうか証明できないため、証拠にはならないでしょう。
Q.モラハラの場合、精神的苦痛を感じても体に傷は残りません。どのように証拠を集めればいいですか?
A.暴言を吐かれた場合はその言葉や回数の記録をとっておきましょう。精神的苦痛による通院があれば、受診記録や診断書があれば、それも証拠として採用されます。
Q.ひとり親世帯への手当は男親でももらえるのですか?
A.「児童扶養手当」はシングルマザーに多く利用されることから「母子手当」と呼ばれることもあります。しかし、ひとり親であれば、母親でも父親でも支給されるものです。「児童扶養手当」は「児童手当」と同時に受給することができます。
Q.年金分割の請求は、どのタイミングで行えばいいですか?
A.離婚が成立したらすぐに請求してかまいません。将来、分割分を受給するには、離婚後2年以内に請求する必要があります。
Q.出産したばかりで仕事をすることができません。どのように離婚準備を進めればいいでしょうか?
A.子どもがある程度大きくなるまで離婚の時期をずらすか、実家に身を寄せるなどの対策が必要です。どうしても収入を得る見通しが立たない場合は、生活保護の需給を検討しましょう。
まとめ
離婚の成立までには、越えなければならないさまざまな壁があります。お金の問題、子どもの問題、住まいや仕事など、決断や対応をすべて一人で行わなければなりません。経済的だけでなく精神的な自立も目指して、新しい自分の人生のために、ぬかりなく準備を進めましょう。