従業員による着服が疑われるケースとは? 事実関係を調査する方法

「従業員が会社のお金を着服・横領しているかもしれない」と疑いを抱いたときは、早めにその真偽を確かめることが大切です。実際に着服されてしまい、会社のイメージやブランドに傷がついてしまったというケースがあります。では、着服の事実関係を調査するには、一体どうすればいいのでしょうか。

本記事では、着服の事実関係を調査する方法や発覚したときの対処法などを解説します。

  1. 従業員による着服が疑われるケースは?
  2. 着服の事実関係を調査する方法
  3. 従業員による着服が発覚した場合の責任追及
  4. 従業員による着服を予防するポイント
  5. 従業員の着服に関してよくある質問

この記事を読むことで、従業員の着服を調べるコツや予防策が分かります。悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

1.従業員による着服が疑われるケースは?

まずは、従業員による着服が疑われるケースをチェックしておきましょう。

1-1.占有する他人のものを奪うのが横領

そもそも、横領とはどんな意味を持っているのか・どんなことなのかハッキリと理解していない方は多いでしょう。簡単に説明すると、横領とは占有する他人のものを奪うことです。他人のものの中には、現金や預金も含まれています。刑法上の解釈では、あたかも自分の所有物のように処分することが横領とみなされている犯罪です。従業員による着服は、業務上で扱う以上、その信頼を裏切る行為になり、重い責任がのしかかります。

1-2.後任が引き継いだ途端に不正が見つかる

従業員による着服や横領が判明するシーンはさまざまですが、後任が引き継いだ途端に不正が見つかるケースがよくあるパターンです。どんなに通常の処理を装ったとしても、通常ではない処理をしなければ着服できません。通常でない処理は、社内の関係者に発見される確率が高いのです。たとえば、長年にわたって1人の従業員が担当していた業務で担当替えが発生し、後任が引き継いだ途端に不正が見つかることになります。

1-3.顧問税理士・取引先・税務署の指摘で明るみに出ることも

内部で不正が発覚するだけでなく、顧問税理士・取引先・税務署の指摘によって従業員の着服が明るみに出るケースもあります。社内の目をごまかせたとしても、外侮から不正を指摘されることは多いのです。たとえば、税務署は横領や着服を調べる機関ではありませんが、申告額と実態が合わなくなり、指摘されたところから横領が発覚することがあります。社内であれ外部であれ、通常でない処理は目立つものです。

2.着服の事実関係を調査する方法

では、着服の事実関係をどのように調査すればいいのでしょうか。

2-1.探偵事務所に依頼する

従業員の着服に対する疑いを持ったとき、最初にやるべきことは事実関係の調査です。調査をせずに従業員の解雇や刑事告訴に着手してはいけません。事実関係で本当に横領をしたのか・いくらの金銭を着服したのかという点を確認することが大切です。ただ、これらの確認は素人では困難な部分があるため、探偵事務所といったプロの業者に依頼することをおすすめします。探偵事務所に依頼することで、着服の証拠をつかめるからです。証拠が不十分なまま解雇に踏み切ってしまうと、不当解雇だと主張される恐れがあります。まずは着服行為の有無と被害金額を確定するため、探偵事務所に証拠集めを依頼しましょう。

2-2.慎重に動かぬ証拠を集める

探偵事務所に調査を依頼しつつ、慎重に動かぬ証拠を集めることが重要です。同僚や関係者から聞き取り調査を行うケースがありますが、このときにも注意しなければなりません。無計画に行ってしまうと、着服行為をした従業員とつながっている人物が証拠を隠してしまう可能性があります。証拠を隠されたり、口裏を合わせて隠蔽されたりしないように、従業員に対して自宅待機を命じましょう。自宅待機を命じることで邪魔されることなく、動かぬ証拠を集められるようになります。

2-3.本人へ聴取を行う

ある程度、証拠を集めることができたら、着服の疑いがある従業員本人からの聞き取り調査を行います。集めた証拠を提示し、着服の事実を認めさせることが1番の目標です。聞き取り調査を行うあたり、あらかじめ従業員に対して伝える必要はありません。話がある旨を伝えておくと、逃げられてしまい聞き取り調査に応じない可能性があります。聞き取り調査を行う際は、事前の予告なしに呼び出して部屋に誘導し、そのまま聞き取りを始めるのがポイントです。

3.従業員による着服が発覚した場合の責任追及

ここでは、従業員による着服が発覚した場合の責任追及について解説します。

3-1.損害賠償請求

事実調査の結果、従業員による着服が発覚し証拠がそろったら、損害賠償請求に進む方法があります。会社のものを着服するのは立派な犯罪なので、その従業員に対して損害賠償請求が可能です。具体的には、着服されたお金の返金・物品の返還・すでに物品が存在しない場合にはその物品価額の賠償を求めることになるでしょう。着服行為から時間が経過していることが多いため、従業員がすでに金銭を使いきっている可能性があります。賠償するのに十分な資産がないこと多いので、その点を踏まえた上で裁判を行わなければなりません。なお、被告となる従業員に資産がない場合は、和解手続きの中で分割払いの取り決めを行うことになります。

3-2.従業員を解雇する

着服した従業員をそのまま働かせることはできません。そのため、解雇するケースがほとんどです。就業規則には、解雇事由・懲戒解雇事由に横領・着服・職務上の非違行為といった記載があれば、その規定に基づいて従業員を解雇することができるでしょう。たとえ、就業規則があって普通解雇事由に着服・横領について記載されていなくても、前各号に準ずる事由に該当し普通解雇事由として認められる可能性があります。懲戒事由に横領・着服が記載されていない場合でも、懲戒解雇ができるかどうかがポイントです。

3-3.刑事告訴をする

損害賠償請求と解雇のほか、刑事告訴という形で責任追及を行う方法もあります。刑事告訴は、会社が捜査機関に対して着服を行った従業員による犯罪事実を申告し、処罰を求める意思表示をすることです。基本的に、業務として会社から預かっている金銭や物品を勝手に売却したり人に贈与したりすると、業務上横領罪に該当します。犯罪だと認められれば、10年以下の懲役が科せられるというわけです。刑事告訴をする場合は、口頭での告訴も可能ですが、具体的に説明するため告訴状などの書面を捜査機関に提出したほうがいいでしょう。

4.従業員による着服を予防するポイント

ここでは、従業員による着服の予防ポイントについて解説します。

4-1.これまでの労務管理を改める

まずは、なぜ従業員が横領できたのか、なぜ横領したのか原因を追及することが大切です。横領が発覚するまでに時間が経過していた場合、これまでの会社における労務管理の方法が不十分だった証(あか)しといえるでしょう。だからこそ、労務管理の方法に不十分な点がなかったか、改めて確認することが大切です。労務管理を改める場合は、以下のポイントに注目してください。

  • 会社の金銭の管理を特定の従業員に任せきりにしていないか・きちんと監督をしているか
  • 経理処理のダブルチェックが行われているか
  • 出入金の記録をこまめにつけているか
  • 経営者が会社の通帳・帳簿のチェックを行っているか
  • 少額の横領を見てみぬふりをしていないか
  • 入社時に身元保証人をつけているか

4-2.定期的に捜査を取り入れる

これまでの労務管理を見直すと同時に、定期的に操作を取り入れることが大切です。経理や現金の取り扱いに関して、ルールがあってもノーチェックであるケースがあります。それが、従業員の不正と横領を許すきっかけになるため、内部監査によるチェックが必要です。経理や現金の取り扱いに関してルールを定めると同時に、マニュアル化し形にすることも大切な予防策となります。そして、そのルールどおりにしっかりと運用されているか半期に1回、1年に1回など頻度を決めてチェックしましょう。具体的なチェックの仕方は以下を参考にしてください。

  • 経理書類のうち、いくつかをサンプリングする
  • マニュアルやルールどおりに記載・運用されているかを確認する
  • 書類作成者など直接の関与者とは別な者が確認を行う
  • 運用誤り・未実施などが確認された場合には是正し、必要に応じて改善策を講じる。あるいは、マニュアル・ルールを見直す

4-3.予実を計画的に取り入れる

予定と実績の意味が含まれている予実を計画的に取り入れることも大切な予防策となります。個人的な経費の漬け込みが行われていると、決算書だけを見ても不正と横領を振り出すことが困難です。そのため、経費について計画(予定)値を持つこと、そして実績が計画値を上まわる経費項目があれば、その内容と理由を確認することを心がけてください。このような予実管理を徹底することで、従業員による不正と着服を見逃す心配もありません。

5.従業員の着服に関してよくある質問

従業員の着服に関する質問を5つピックアップしてみました。

Q.着服の事実を否定されたときの対処法は?
A.決定的な証拠があるにもかかわらず、着服の事実を否定される可能性があります。その場合は、従業員の話を具体的に聞き出し、言い分をすべて記録することが大切です。これまでに集めた証拠と言い分を照らし合わせながら、矛盾点を導き出しましょう。どんなに、従業員が着服行為を否定したとしても、矛盾点をつくことで最終的に事実を認めることがあります。また、弁護士など第3者に立ち会ってもらい、冷静な視点から指摘を入れてもらうのも対処法の1つです。

Q.給料から天引きして賠償させることはできるのか?
A.給料から天引きして賠償させることはできません。労働基準法で定められている賃金金額払いの原則によって、法令で認められた源泉徴収や社会保険料控除など以外には、賃金の一部を差し引いて支払うことが禁止されています。ただし、従業員の同意を得ていれば給料と損害賠償請求権とを相殺していいという例外がありますが、双方の同意がポイントです。

Q.着服された金銭を返済してもらうポイントは?
A.返済請求のポイントは、以下の4点です。

  • 身分保証書取得の有無を確認する
  • 本人・身分保証人の財産調査を行う
  • 着服・横領に関する証拠を収集する
  • 内容証明の前に話し合いによる返還請求をする

身分保証書の有無・財産状況・横領に関する証拠を確認した後は、本人や身元保証人との話し合いを行うことが大切です。最初から内容証明の送付や訴訟などの手段を取ってしまうと、事案が長期化するリスクがあります。話し合いで返還してもらえない場合は、内容証明の送付や訴訟の選択を取りましょう。

Q.刑事告訴をするメリットは?
A.刑事告訴の大きなメリットは、犯人に処罰を科すことができる点です。前述したように、業務上横領罪の場合、処罰は10年以下の懲役とされています。また、着服金の返済につながりやすくなるのもメリットの1つです。刑事告訴は着服金の返済を促す有力な手段といえるでしょう。業務上横領の処罰は、着服・横領金を返済したかどうかで刑の重さが変わります。

Q.探偵事務所選びのポイントは?
A.着服の事実調査や証拠を集めるために重要なのは、探偵事務所選びです。どの探偵事務所に依頼すればいいのか分からない方は、以下のポイントに注目するといいでしょう。

  • 探偵業の許可を取得しているか
  • 無料相談を受けつけているか
  • 調査料金が明確に記載されているか
  • 弁護士との連携といったアフターサービスが充実しているか
  • どのような方法で調査を行うか説明してくれるか
  • 調査員の対応が丁寧でスピーディーか
  • 親身になって話を聞いてくれるか

千葉県を中心に探偵業を行っているアヴァンスでは、無料相談を受けつけています。悩んでいる方はぜひ1度ご相談ください。

まとめ

従業員の着服がマスコミに報道されてしまうと、会社に大きな傷がついてしまう恐れがあります。早めに解決するには、探偵事務所に着服の調査を依頼するのがおすすめです。素行・行動調査を行うことで、対象となる人物がいつどこで何をしているのか自分で調べるよりもすぐに判明するでしょう。着服の証拠をつかんだ後は、従業員や関係者に対してどのような責任追及や処分を行うべきか検討しなければなりません。探偵事務所の中には、弁護士と連携を取っているところもあるので、相談しながら進めることができるでしょう。